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私の留学レポート:シンガポール?南洋理工大学?山本 樹延さん(3)~

国際教養大学では1年間の留学が必須となっています。語学留学ではありません。専門科目を現地の学生と共に履修し、本学での卒業単位の一部として認められる必要がある、「本気」の留学。学生が、それぞれ深めたい学問分野に応じて200以上ある海外提携大学の中から選択します。良いことばかりじゃない、ときには苦しいことや辛いこともあるのがAIUの「本気」の留学です。ここでは、そんな学生一人ひとりのストーリーを自身の言葉でレポートしてもらいます。

今回は、シンガポールに留学中の山本 樹延(やまもと きの)さんのレポート最終回をご紹介します。

留学中にできた友人と「ボロブドゥール遺跡」にて(写真左が山本さん)

特に印象に残った出来事

留学最後の思い出深いエピソードは、インドネシアのジョグジャカルタへ旅行に行き、遺跡群を巡ったことです。私はシンガポールを起点として、周辺の東南アジアの国々を訪れることを、留学中に達成したい目標の一つとしていました。留学開始から2学期目までにタイ、ベトナム、マレーシアに行き、帰国前に最後の旅先としてインドネシアを選びました。また、留学中に履修した観光社会学の授業で、ジョグジャカルタやバリ島などインドネシアの観光開発について学んだことも、今回の訪問先を選ぶきっかけになりました。授業で学んだ内容について、実際に現地に赴き、自分の目で見て考えてみたいと思っていました。

ジョグジャカルタは、伝統的なジャワ島の文化、芸術の中心地であるほか、コロニアル様式の街並みや世界遺産がある観光都市としても知られています。また、ユネスコの世界遺産にも登録されているボロブドゥ-ル遺跡があります。ボロブドゥ-ル遺跡は観光社会学の授業の題材として取り上げられ、インドネシアの観光開発や観光資源としての世界遺産の役割、遺跡保存などについて学んでいたため、訪問先として最も楽しみにしていました。この旅行を通して、授業で学んだボロブドゥール遺跡の観光開発の問題やその影響を自分自身で確認するとともに、地元の人々の視点なども知ることができ、より面白さを感じるようになりました。

世界三大仏教遺跡の一つ、ボロブドゥール遺跡。最上層には中心仏塔を載せており、階段ピラミッド状の構造となっています。

留学中、最も影響を受けた活動

これまでの留学レポートでも、大学内外で参加したさまざまな活動について紹介しましたが、留学を終えて、その中で最も影響を受けたと感じているものは、NTU Japanese Appreciation Club (JAC)での活動です。この団体にはアニメや漫画、言語、音楽、食べ物、旅行など多様なきっかけから日本文化に興味を持った学生が多く参加していました。運営に近い立場で参加していた私は、活動を主導する機会と、より深く人と関わる機会に恵まれたように感じます。この活動では、友人ができた以上の経験も得たと考えています。それは、この団体で知り合う学生から日本に対するさまざまな意見を聞くことができたことです。日本文化が好きだから日本の全てに好意的な意見を持っている、という訳ではないことを知りました。他国の方々のさまざまな声や感情に触れることができたのは、貴重な経験だったと思います。私自身、それらの意見を受け止めながら、自分の考えや認識を深めていくような感覚がありました。留学前と比べて、自分が関わっている社会について考える機会が増えたこと、柔軟に多様な視点で考えるようになったことは、この団体の活動に参加したからこその成長だと考えています。

留学中のさまざまな活動を通して、自発的に、時には周囲を巻き込んで行動する姿勢の大切さを学べたと感じます。留学前の自分は、授業の忙しさや他の学生の積極性に臆してしまい、大学内外での活動に自発的に参加できませんでした。しかし、留学先で複数のクラブ活動やボランティアに参加したことや、現地の大学生、留学生との交流によって、徐々に気持ちの変化や自身の成長を感じるようになりました。

NTU Japanese Appreciation Club(JAC)の活動では文化交流会を開催しました。
学内イベントでは、NTU Japanese Appreciation Club(JAC)として、茶道体験ブースを出店しました。

後輩の皆さんやAIUへ入学を希望する学生へのメッセージ

後輩の皆さんやAIUへ入学を希望する学生へのメッセージとして、第1回の留学レポートで英語に苦手意識があっても、ツールとして使えるよう努力すること、また他の部分でどのように苦手意識を補っていくのか、ということについて触れました。留学後もその考えは変わっていません。
留学先では、英語の必要性を再認識する一方で、英語力以外の教養やAIUで学んだ専門領域の知識の下地の重要性もよりいっそう感じるようになりました。留学前は英語力を伸ばすことへの焦りから、知識の収集を日本語に頼ることに後ろめたさを感じることもありました。しかし、留学を経てその迷いはなくなりつつあると感じています。NTUの周りの学生はレベルが非常に高いので、自分に足りないものを補っていくために知識の収集を英語だけ、日本語だけと自分に縛りを課さず、効果的な方法を選ぶという意識が生まれました。英語、日本語どちらの知識にもアクセスできるということをポジティブに捉え、今後の学びに活かす方法を考えたいと思っています。

今後の目標

留学で得た経験や思いをAIUや周りの人に還元することが、今後の目標です。わたしはコロナ禍の中、留学生のいないキャンパスでAIU生活を始め、留学生が戻ってからも授業以外では関わりが少ないまま過ごしていました。しかし、そんな自分が留学生として、知らない場所で生活を始めることになり、現地の友人に何度も助けられました。交換留学生の私に気さくに接してくれたことを嬉しく感じました。自分が留学生として過ごすという視点から物事を見ることで、AIUの交換留学生と積極的に関わり、助けてあげられるようになりたいと考えるようになりました。今後は、留学に出発する後輩やAIUへの入学を考えている高校生へのアドバイスなど、AIUコミュニティにも貢献できればと思います。最後になりますが、渡航準備を献身的にサポートし、今回の留学を実現してくださった国際センターの方々や支えてくれた人々に心から感謝しています。ありがとうございました。

国際センターから一言

留学中の多くの経験から、考え方にも心境にもさまざまな変化が起こる中で、英語という言語が学ぶ対象から、学ぶためのツールになっていく過程が興味深いです。英語はあくまでもツールなのだと頭では理解していても、英語力を高める必要がある中で、日本語を介して情報を得ることに後ろめたさを感じたという山本さんの気持ちは、AIU生の多くが共感するところです。今後は英語と日本語の情報世界を自由に行き来しながら、以前から学習に取り組まれている韓国語もまた山本さんの知識を広げる第3のツールとなるといいですね。

英語版ウェブサイトでは、留学生たちの本学での留学体験記を「Student Voice」として紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。